オランダの風景(4〜7月)

LIFE LANDSCAPE

Landscape of the Netherlands
-Spring to Summer

昨夜、遅くに帰宅して夕飯を食べていた夫が、私にこう聞いた。

「それで、4ヶ月経って、どう?」

特にわけはないらしい。オランダに来て半年経った彼は、最近は1日があっという間に感じると言った。その言葉を聞いて私は逆に、まだ4ヶ月しか経っていないのかと思った。

オランダに着いた3月末は、寒くてダウンコートを着ていた。4月1日には雪が降った。今は夏で、30度を超える日もあるけれど、比較的涼しいので、やはり日本とは気候がだいぶ違う。改めて考えると、朝起きてから1日に見る景色は4ヶ月前とずいぶん変わった。それから、空気と匂いもぜんぜん違う。忘れないうちに書き留めておきたい。

今回は、オランダで、私が見ている風景をご紹介します。

以下、思いついた順に。

アムステルダム中央駅付近
自宅から見える夕日 (22:40)

広い。日本で人口密度がオランダの3倍以上の場所に住んでいたから、そう感じるのかもしれない。春は、天気が1日に何度も変わる。晴れた日は、雲があまりない印象。空港から車で15分ほどの場所に住んでいるので、飛行機や飛行機雲を見かけることが多い。夏に近づくと日が沈まなくなる。夜の十時を過ぎて夕陽を眺めるのは、不思議な感覚だ。

バスの車窓から見える 風車と牛
強い風が吹いた日のアムステルダム 運河に花びらが舞い落ちている

いつでも、風が吹いている。強い日があればかすかな日もある。風向きや強さによって、ときどき朝起きると、牛馬と草のにおい。街の中心を漂う、コーヒーショップの甘い香り。くるくると踊る街路樹の落ち葉。風がいろいろなものを運んでくる。

運河

アムステルダム市内 6月
アムステルダム市内 7月

人やものが行き交うcanal(オランダ語でカナル)という運河=水路が、街中にはりめぐらされているオランダ。アムステルダムの旧市街や郊外の住宅街には、カナルハウスやカナルボートと呼ばれる家や舟があり、運河とともに暮らす人々がいる。

カモ・かもめ・カラス連合20羽に対しヒト1名 (よくある光景)
早朝 寝ているコガモたち いつも母さんガモは起きている

この国は、人よりも鳥の数が多い(気がする)。毎朝5時前に、カモメの鳴き声(激しいかんじの)で目が覚める。朝は特に、運河や湖などの水辺は完全に鳥のテリトリーになる。だから早朝にジョギングをする時は、驚かさないように、音を立てないように走る。カモ、かもめ、カラスをよく見かける。たまに、腰ぐらいの高さがあるカモがいたりと、全体的にサイズが大きめで、鳥は人と対等に暮らしているようにみえる。

マルクト(市場)の花屋
スーパーマーケットの入り口の隣に 旬の花が並ぶ チューリップは束で2€(約270円)
スーパーマーケットの外にある無料のラッピングコーナー (セルフサービス)
誰かに会いに行くとき 気軽に花束を持っていく

どこを歩いていても花がある。アムステルダムの旧市街のほとんどの家は、玄関や窓辺に花を飾っている。市場ではフラワーショップがにぎわっていて、切花だけでなく鉢植えも人気。週末に、大きな花束を抱えている人をよく見かける。

自転車

運河沿いに停めてある自転車
右から歩道、自転車専用道路、写っていないが さらに左に車道がある

街では、車より自転車に優先権がある。海よりも低い土地に国をつくったので、オランダにはほとんど坂がない。フィッツパット(fietspad)と呼ばれる自転車専用道路が整備されていて、12歳以上の市民の約6割が、自転車に一日一度は乗るという。フィッツパットを走っていれば安全だと思っているからなのか、罰金の規則もなんのその、片手にスマートフォンで話しながら、プロのロードレーサー並みの速さで駆け抜けていくおばあちゃんがいたりして、おののく。

以上、オランダの4ヶ月(春〜夏)の風景でした。

おわりに 引越しから4ヶ月経って分かったこと
いつからオランダにいますかと聞かれて、3月末だと話すと、いい時期に来ましたねと言われることが多い。たしかに、春から夏にかけて、花と緑あふれるオランダの街は美しく、英語が通じて、人々はフレンドリーだ。そのあたりは間違いなくそうだと思うのだが、気候や言葉など、やはり生活の変化は大きかった。変化に無理に抗おうとした結果、こちらに来て2ヶ月半を過ぎた頃に体調を崩し、回復にひと月ほどかかった。

以前に読んだ何かの記事に、人間は、「がんばる。」の状態は続けられても、「ものすごくがんばる!」の状態は、3ヶ月くらいしかもたないと書いてあったが、これは本当だった。これから引っ越しや転職、転校、異動など、新しい環境に身を置くことを控えている方には、3ヶ月で一度パワー切れになることを念頭に置いていただき、どうかその時期は、自分に特別やさしくしてくださいと伝えたい。渦中にいると、なかなか自分では気がつけないものだし、慣れない環境で一度崩れたものを回復させるのは、結構大変だからだ。

少し話がそれてしまったが、残り少ない夏を終えたら、ものすごく寒いオランダの秋冬が待ち構えている。ほどほどにがんばりつつ、楽しみをみつけながら、また新たな季節を感じたい。