Landscape of the Netherlands -Autumn to Winter-
もうすぐ2022年も終わろうというところ、またしてもオーブンの前にいる。今日焼いているのはバナナブレッドだ。12月に入ってからマイナス5°前後の日が続くオランダではゆっくりとクリスマスがフェードアウトしている。気がついたら新年ということになりそうなので、秋以降にがらりと変わったオランダの景色を振り返っておく。
今回は、オランダの秋と冬の風景をご紹介します!
木々の変化
今年の秋は一瞬で過ぎ去り、そこまで急がなくてもと思うくらいの速さで冬がやってきた。9月に入ったとたんにいきなり気温が下がったけれども植物はついてゆけなかったとみえ、どんぐりがざざーっと落ちたあと思い出したように10月のはじめ頃に紅葉がみられた。どんぐりの上で自転車のスピードを出しすぎるとスピンするので注意が必要だ。
空と太陽
あんなに夏に明るかった空が冬至に向かってどんどん暗くなる。日の出は8時半、日の入りは16時半頃だ。みんな外が真っ暗なうちに家を出て学校や会社に向かい帰宅する時も夕闇。太陽が出ないので朝起きる時間になっても体が目を覚ましてくれず、時おり心もとない気持ちになる。日照時間が少ないことで毎年数万人の人が冬季うつ病にかかるオランダでは対策としてビタミンD剤を飲む習慣が一般的だ。この時期はおひさまを口実にして早めにベッドに入るに限る。
大地と運河
気温が0°を下回った日は地面に霜が下り草木は氷の結晶に覆われる。霧の多いアムステルダムで運河沿いを自転車で走っていると、濃霧で視界がぼやけて自分がいる場所が不確かに思えることもしばしば。自転車通学をするアムステルっ子たちの中には、手がかじかむからか両手をコートのポケットに入れたまま乗っている命知らずがいる。確かに雪用グローブをしていても、手が冷たいを超えてビリビリと痛いほどの寒さなので気持ちは分かるが、危険極まりない。私は10月から自転車で娘の学校送迎をしている。子どもを乗せてスリップ横転するのが怖いので、いつでも減速の準備をしながらフィッツパッド(自転車道)をひた走る。
エルテンスープ
9月以降はカフェやマルクト(市場)にエルテンスープが登場する。乾燥エンドウ豆をベースにした具だくさんのスープで秋冬の風物詩のひとつとなっている。栄養価が高く体があたたまる人気メニューだ。
シントマーティン祭
11月初旬に、スペインから汽船に乗ってシンタクラース(サンタクロースとは別人で聖人の1人)がオランダに来る。到着前夜はシントマーティン祭だ。子どもたちは手作りのランタンを持ってハロウィンのように近所の明かりがついた家をまわり、歌を歌ってペーパーノーテンというシナモン入りの小さな丸いクッキーやお菓子をもらう。アムステルダム運河や街の大きな公園などでパレードやイベントが行われる。お供のピートが大人気で仮装をしている子をたくさんみかける。
スケート
12月に入ったら街の広場やショッピングモールにスケートリンクが設置される。厳しい寒さの中でも楽しく過ごせるアクティビティとしてスケートは一般的で、オランダの子どもたちは3才くらいから滑りはじめる。マイスケート靴を持っている子がちょっと余裕な表情だったりしていて可愛い。ジャクソン5やジャスティンビーバーなどの明るい楽曲がスピーカーから流れる中、子どもと大人が一緒にはしゃいで汗をかける貴重なプレイスポット。
オリボーレン
ドーナツに似た冬季限定のオランダ伝統菓子。オランダの人々はクリスマスや大晦日の夜にオリボーレンを食べて祝う習慣がある。冬は街のいたるところにオリボーレン屋台が出て、店先にはオリボーレンのほかアップルベニエというアップルパイに似たカスタードクリーム入りの伝統菓子、チュロスやワッフルが並ぶ。
クリスマス
11月中旬からアムステルダムの街でクリスマスムードが加速する。
先日、図書館前の自転車置き場でお母さんが息子さんに英語で囁いていた。「今日はいちばん暗い日(darkest day)なのよ。だから早く帰ってキャンドルを灯しましょうね。」この言葉にはクリスマスが凝縮されている。今さらだがクリスマスはキリスト教の祭典だ。またヨーロッパのクリスマスと言っても各国によって習慣が違う。ドイツではカード交換が盛んだったり、フランスはグルメ方面に寄っていたりというふうに。
アムステルダムは街や運河がライトアップされ普段よりホーリーな雰囲気になる。人々はツリーやオーナメント、アドベントカレンダーを買い求め25日を楽しみに待つ。ヨーロッパのクリスマスが美しいのは、小さい頃からクリスマスは大切な人たちと静かに祈り過ごす神聖な日だと教えられ、そうありたいという共通の願いを持った人々が多く暮らす場所だからかもしれない。
感じようと思えばいくらでも
クリスマスホリデーに入る直前に友人がクリスマスカードをくれた。そこには日頃の感謝が綴ってあり最後にYour friendxxxとサインがあった。2022年にオランダへ引っ越してきて9ヶ月、いまだに生活は落ち着いていないし1年間楽しいことがたくさんあったけれど正直いって大変なことの方が多く日々は新しい刺激と落胆悲観とのせめぎ合いだった。それでも新しい友人が出来て、こんなバックトゥーザ・フューチャーのドクみたいな手紙をもらえるなんて人生捨てたものでもない。
また何よりも、旧来のつきあいがある友人たち。彼らが忙しいなか時間と労力を使って日本から手紙や荷物を送ってくれたり、「つらくなったら電話していいよ。」「いつでも連絡して。」と優しいメッセージを送ってくれたことを忘れない。今年の経験をふまえて、来年はもう少しだけコンフォートゾーンの外に出ていけたらと思っている。
みなさまにとって穏やかな年が訪れますように。