フランシスと花束

CULTURE

Francis and the bunch of flowers

この地球上で最大の花市場があるオランダは、世界有数の花大国として知られている。

オランダに到着した翌日、私たち家族が借りている家の大家さんが挨拶に来てくれた。大家さんは、おばあちゃまと聞いていたけれど、息子さんが2人いて、実質3人でサポートしてくれるらしい。今回はお兄さんの方が来てくれるという。頼もしい限りだ。

午後7時きっかりにベルが鳴り、30秒後に大きなチューリップの花束を持った、にこやかな男性が玄関の前に颯爽と現れた。

「はじめまして。フランシスといいます。」

「何か困ったことはない?」

フランシスは、「ようこそオランダへ。私たちの母から、ウェルカムの気持ちを込めて、ダッチチューリップを持ってきました。よかったらどうぞ。」と言って、両手いっぱいの花束と、お母さんからの手書きメッセージが入ったカードを渡してくれた。

ここまでさりげなく花束を貰ったのは、人生で初めてかもしれない。グリーンの茎と葉がむき出しになっていて全然飾り気がなくて、ラッピング材ではなく植物が主役の花束と豪快でさわやかな男性の組み合わせは、感じがよかった。

花束効果 恐るべし
本当は、困っていることはあった。冷蔵庫が始終すごい音で唸っていることや、玄関の鍵が固くて開けるのに10分以上かかること、ヨーロッパの家にありがちと思われる古い水回り、ドアの建てつけの悪さなど、気になることがあったはずなのだが、貰ったチューリップの花束が、あまりに美しく、もはや細かいことは気にしかなくていいかという心境になってしまった。

全人類の手土産 ヨックモック
日本のおみやげとして、ヨックモックのお菓子を持参していたので、フランシスに渡したらとても喜んでくれた。日本の方はもちろん、ヨックモックを知らない外国の方など、どんな方にお渡ししても、”わあ!”とか、”美味しい!”などといった、前向きなリアクションをしてもらえることが多いため、改めて、ワールドワイドな銘菓だと感心している。

植物は共通言語
娘と私は花や植物が好きなので、花束がとても嬉しいと伝えたところ、フランシスの顔がひときわ明るくなった。「キューケンホフ公園は知ってる?3月22日から5月まで、このピリオドだけ開園する、素晴らしいチューリップの公園だよ。」と紹介してくれた。本当に好きなことが伝わってきたし、オランダで植物の話をすることは、人の心の扉をあける鍵のひとつなのかもしれない。

実際にフランシスが持ってきてくれた ダッチチューリップの花束