アメリカに引っ越してきてから、週末はブルックリンで過ごしていることが多い。20年前はニューヨークといえばマンハッタンのことだったように思うけれど、今の20代の人たちはニューヨークというとブルックリン大橋を思い浮かべるという。街としてのピークは10年前とも言われるが、ヘルシーでナチュラルなライフスタイルを好む人たちが多く、美味しいお店もたくさんあって過ごしやすいエリアだ。今回は、そんなブルックリンでお気に入りのコーヒー屋さんを紹介したい。
SEY Coffee(セイ コーヒー)
今もっとも地元のブルックリナーたちから熱い視線を浴びているコーヒー屋さんといえば、このSEYコーヒーではないだろうか。アメリカいちとうたわれるコーヒーは、すっきりとして味わい深く、まるでアルコールを摂ったあとのように、頭の中がふわぁーとする気持ちの良い余韻が残る。
店内はコンクリートの壁に木製の長いカウンターテーブルが置かれ、朝から夕方まで自然光が入るので明るい。外から見るとたくさんの観葉植物に埋もれてコーヒーを飲んでいる人々がちらちらと見える。朝型のブルックリナーに合わせ営業時間は朝7時から夕方の17時まで。サスティナブルな運営でも知られており「居心地のよい空間で、おいしいコーヒを飲んでほしい。」というスピリットが随所に感じられる。ニューヨークでひとつだけと言われたらこちらを選びたい。
Brooklyn Roasting Company(ブルックリン ロースティング カンパニー)
ブルックリンがおしゃれと言われはじめたのは、富裕層が住み始めた90年代以降のことで、街としての本来的なブルックリンの面白さは、映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』(原題: Do the right thing)に描かれているような、都市部の貧困や犯罪、人種差別に対する怒りなどが原動力となって生まれた文化的多様性やヒップスターカルチャーだ。このBrooklyn Roasting Company(ブルックリン ロースティング カンパニー)には、そんなブルックリンのルーツを感じる。先にあげたSEYコーヒーが感度が高い人たちのホットスポットだとすれば、こちらは飾らない無骨さが魅力の本格派コーヒーショップだ。
フェアトレードのスペシャリティコーヒーを扱っているけれど、お値段が良心的なので、我が家は毎回ブリキの缶を持参してこちらの豆を購入し、ふだん使いとしている。また、マフィンやクロワッサン、パン・オ・ショコラなどのペストリーも人気で、早朝仕事のいかつい男性たちがコーヒーと一緒に甘いドーナツを頼んでいる姿をよく見かける。ニューヨークに5店舗あるけれど、時間が許すなら、ブルックリンエリアの店舗だけが持っている独特のムードを体験しに行きたい。
おわりに
ブルックリンの街は広いので、旅行で訪れる際はやりたいことや行きたい場所の優先順位をつけておいて、今日はウィリアムズバーグ、あしたはレッドフック周辺、というように1日1エリアを訪問するくらいが良いと思う。また、今回紹介した2つのコーヒー屋さん周辺を含め、街の治安は決して安心できる環境ではない。危険な雰囲気の通りは出来るだけ避け、地下鉄で目的地の最寄駅まで直行し、身の安全に気を配りつつあまりウロウロしないことをおすすめしたい。そこだけ気をつけたら、あとはブルックリンの街にしかない景色と雰囲気を楽しみつつ、一杯のコーヒーを心ゆくまで味わってほしい。