先週からまた気温が下がり、朝は10℃を下回る日が出てきたニューヨーク。アメリカへ来たばかりの時に引っ越しによる疲労で体調を崩して以来、久しぶりに私以外の家族が風邪で寝込んで2日間ほど家にいた。こういう時は和食が食べたいと娘がつぶやいたので、ふたりでその日の気分や体調によって食べたいものについて話した。海外生活が2年半を過ぎた現在、自分と家族の食生活についてまとめておく。
オランダで起きたこと
我が家の食事にはスペシャルニーズがある。2022年1月に日本からオランダへ移動後、2ヶ月間のホテル暮らしとなり米からパン食を続けた私の夫は、小麦・卵・乳製品・ナッツ類・トマトやキャベツを含む数種類の野菜に対して遅延性食物アレルギーを発症し体調を崩した。日本ではたまに牛乳飲むとお腹が痛くなると言っていた程度だったけれど、不慣れな土地で長時間労働とストレスフルな環境に長期間さらされたことにより、もともと持っていたアレルギー体質が出たのだと思われる。彼は体重が激減し、より適切な体調管理が必須となったため、住む場所と矛盾するように家族の食事は基本的に9割自炊のアレルギー対応食(和食)プラスときどき西洋料理となった。
もしこれから外国へ移住を考えているかたがいたら、日本を出る前に詳しい食物アレルギー検査されることをお勧めしたい。アレルギーがある人でも事前に体質を知ることで自分に合ったものを選んで体調管理がしやすくなるからだ。小麦卵乳製品が食べられなくともパンとオムレツとチーズの国々へ行って生活することは不可能ではない。しかしそれにつけても食はあなどれないので、よく調べて味方につけることが大事だと思う。
NY州ロングアイランドでの食材調達
外国で和食を作る時にどこで日本食材を買うのか?は、日本と外国の友人たち双方からよく聞かれる質問だ。現在住んでいるアメリカニューヨーク州ロングアイランド郊外での食材調達は、薄切り肉や調味料などのアジア食材はHマートという韓国系スーパー、はなまるマーケットという日系スーパー、そしてAマートという中国系スーパーをはしごしてまかなっている。ちなみに野菜やその他の材料については生活動線に合わせてWhole Foods Market、Trader Joe’s、LiDL、Shop Rite、Jone’s farmという5つのスーパーで購入するので、計7つのスーパーを使っていることになる。アジア系の調味料はWeee!というネットスーパーサービスを使うと、米国内なら1週間ほどで配送してくれるらしいので、機会があったら使ってみたい。ちなみにオランダでは手に入った刺身は、アメリカでは日系や韓国系スーパーにあってもパックあたり5千円〜1万円近くするなど高価なので、生魚とはご無沙汰している。
落ち着きたい時の和食
たまの外食や近所の集まりなどでピザやハンバーガーを食べる機会はあるものの、日本の気候と食事で育った体にはやはり和食が馴染むし体調を崩しにくいように思う。夫は和食マストだけれど娘の好物はグラタンなどの洋食だったりするので、余力がある日は別メニューで洋食のおかずを作ったりする。朝食はたいてい玄米×白米ごはんに味噌汁で、直近2週間のメニューはこのような感じだった。
WEEK1
月:鮭のホイル焼き、白菜と鶏つみれのスープ
火:白身魚のムニエル、豚汁
水:豚のしょうが焼き、ほうれん草の味噌汁
木:鳥パリパリ焼き、なすとかぼちゃと油あげの味噌汁
金:ハンバーグ、グリーンビーンズ、オニオンコンソメスープ
土:グルテンフリーパスタ・カルボナーラ
日:野菜や肉の炭火焼き
WEEK2
月:鯖の塩焼き、豚汁
火:しそしらす丼、ねぎとわかめの味噌汁
水:豚じゃが、ほうれん草のかきたま汁
木:炊き込みご飯、鶏肉のパリパリ焼き、なめこの味噌汁
金:炊き込みご飯2日目、ポークカツレツ、焼き野菜、かぶのポタージュ
土:スープカレー(小麦粉なし)
日:グルテンフリーパスタペンネ・ミートソース
※余力があるときはサラダ付
※土日のできる時は夫が担当
偏りがあるのは家族のアレルギーを考慮する関係で、小麦・卵・乳製品・大豆・ほかトマトやキャベツなど数種類の野菜があまり使えないためだ。この2年半ほど、西洋料理系食材にアレルギーがある体でどのように欧米で健康維持をすれば良いのか?をずっと考えてやってきて私が出した答え「我が家の健康維持のための命綱食材リスト」は、新鮮な野菜、米、玄米、タンパク質、オリーブオイルと塩胡椒、バター、醤油、日本酒または中国酒、みりん、酢である。あとは娘と私の嗜好でミルク、たまご、バターなどの嗜好品を随時買い揃えている。
元気がある時に食べたいアメリカ料理
普段は和食中心の生活を送っているけれど、週末に出かけてブランチをとる時やブルックリンやマンハッタンに出かけた時、近所の友人たちと食事をする時などは、今日はスペシャルとしてアメリカならではの食事を楽しむことにしている。もともとピザが大好きな娘いわく、アメリカのごはんは自分にエナジーがある時や楽しい気持ちになりたい時にすごく食べたくなるのだそうだ。多くの食材アレルギーを持つ夫にしても、決してバーガーやパスタを食べたくないわけではなく、ほんとうは食べたいけれど食べると体調が悪化するので食べられないという状態なので、体調不良になるのを覚悟で、ごくたまに息抜きとしてパンやポテトやオニオンリングをひと口かふた口ほど一緒に食べたりする。
これは私と娘のアメリカ料理への感想だけれど、ピッツァ、バーガー、マックアンドチーズ、チリ、赤身ステーキ、マッシュポテト、パンケーキ、ドーナッツといったアメリカ料理は、明るくて楽しいムードなるところが大好きだ。個人的には、コーヒーと一緒に食べると最高の気持ちになるものが多いと思う。
その時々で喜びをくれる各地の料理とソウルフード
そんな和食ときどき西洋料理のなかで、娘が思い出したようにオランダ料理を語る時がある。それはたいてい二人で出かけた時のことで、彼女はその時に食べたものを覚えていて、たとえばアムステルダムの映画館近くにあった食堂のクロケットとエルテンスープ、住んでいたアムステルフェーンの金曜日のマルクト(市場)で売っていた焼きたてのストロープワッフル、ユトレヒトのカフェでいつも注文していたねじねじパン、冬だけのお楽しみオリボーレンなどなどで、あれはおいしかったなあ、と言う。アメリカのスーパーマーケットでオランダ風のポッフルチェスというプチパンケーキを見つけた時は、懐かしくなって自宅で真似して作ったりした。その土地の料理というのは、それぞれの土地の街並みや人の雰囲気と一緒にある特別なものなので、作ったはいいものの、うーんなんか違う?となったりするのだけれど、誰かと時間を巻き戻しながら一緒に過ごした過去を思い出す時間は楽しい。
これは食べられないと言っていい
私たちの体は食べたもので出来ているので、何を入れて入れないかに気をつけることは大切だ。日本文化の中では食べものの好き嫌いはあまり推奨されていないと感じることが多々あるが、諸外国の人たちは「私は⚪︎⚪︎を食べない。」とかなりはっきり言う。
これは30年以上前に昭和が終わる直前の話で、当時4才くらいだった私は、同じマンションの下の階に住んでいた友人さっちゃんの家に1人で遊びに行って夕食をごちそうになり、苦手だったピーマンを残した。さっちゃんの家でキョンシーの映画を観てルンルンで帰宅すると、なぜかピーマンの件が母にバレていて(さっちゃんのママが電話で私の母に伝えていたことが後日発覚した)玄関で頰を打たれた記憶がある。私は私の母を尊敬しているし大好きだけれど、現代のオランダやアメリカで、もし私が今、当時の母やさっちゃんのママと同じことを保護者たちにしたら、おそらくリスペクトがないということでトラブルになることが予想される。私が外国で接した外国の大人たちは、我が子が新しい食べ物にひと口でもトライしたら褒める人がほとんどだからだ。(私見だけれどフランスの人は食べ物に関してはいくつかの部分で日本より厳しい教育があるように感じる。)私は、あの時の母と同じように専業主婦とはなったが、時代と場所によってさまざなやり方が存在するのだと実感している。
終わりに
個人の特性や文化、宗教、好みなどによって食事をそれぞれのニーズに合わせることはけっこう大変だなことだけれど、考えようによってはやりがいにもなる。これからもダイニングテーブルメンバーのTPOに合わせ、それぞれの食文化を尊重し、愛でる心を持って、できるだけあたたかい食卓を囲みたい。