Season of Hand-knitting
つくりたい気持ち
いつも寝坊する娘が早起きしてきたので、どうしたのかと思ったら、おもむろに手提げから1枚のプリントを取り出した。学童保育で、編み物ができるらしいから自分もやってみたいと言う。
情熱が傾くままに
普段は親の方から何かをするように働きかけることは、あまりしない(怠慢とも言う)のだが、子どもが自らやりたいと言ったことには、協力を惜しまないことにしている。編み物のことは、自分で全てやるからママは何もしなくて良い、毛糸が3つ必要だからそれだけはどうしても買ってほしいと熱心な様子なので、話を聞いたその足で、新宿のオカダヤへ行くことにした。
すべてを呑み込んでゆく 新宿の街
高校生の時から、社会人になった今も、数えきれないほど通っている新宿は、私の心のホームタウンだ。年の瀬の夕暮れ時に、所持金500円が入った財布を握りしめた娘とこの大都会を歩いていることを不思議に思いながら、手芸屋の門をくぐった。
ハンドメイド好きにはたまらない店 “OKADAYA”
オカダヤは、布・生地・毛糸・手芸用品を10万点以上扱う専門店だ。中でも新宿本店は長年愛されている店舗で、活気のある店内は、文化服装学院などファッション系の学校に通う生徒さんや、舞台系、洋裁系、手芸系の人々であふれている。何かを作ることが好きな娘は、水を得た魚のように、所狭しと並ぶボタンや毛糸に目を輝かせた。毛糸のフロアを一巡し、冬色のマフラーにすると言って3つの毛糸を選んで持ってきた。
手作り小物で 冬もあったか
翌朝、娘は、自分で選んだ毛糸を持って、意気揚々と学校へ行った。そして驚異的な集中力で、わずか1日でマフラーを仕上げて帰ってきた。自分に巻いて、ぬいぐるみに巻いて、はじめて手作りしたマフラーは、購入したものよりもなぜかあたたかい気がすると言って、とても気に入っているようだ。
手仕事っていいな
ひと編み、ひと編み、毛糸を指で編んでいくと、無心に近づく瞬間がある。こつこつ作業する手仕事の時間は、子どもの心に、穏やかな達成感を与えてくれたようだ。その経験は、時が経っても、おひさまに干していたふかふかのかけ布団のように、彼女をあたためるかもしれない。