褐色の落ち葉がはらはらと舞う10月31日、アメリカは一年で最大級のイベントであるハロウィンに湧いた。最近は日本でもハロウィンという言葉が浸透してきたから仮装したり子どもたちがキャンディーをもらったりするのかななんてイメージはあったけれど、実際のインパクトは想像を上回った。今回は、びっくりするほど盛り上がる本場アメリカのハロウィンを前後編に分けて書きたいと思う。
ハロウィン前のそわそわムード
新学期が始まる9月初旬からアメリカのハロウィンは動き出す。スーパーマーケットの玄関にかぼちゃが山積みにされ、CVS(日本でいうドラッグストアの規模が大きくなったもの)に装飾品やハロウィン用のお菓子の特設コーナーが登場。大人も子供も浮かれながら自宅の装飾にいそしんでいる。黒・オレンジ・紫の3色を基調に住宅地はどんどんスプーキーへ。日本のお正月レベルで、「今年もこの季節がやってきた。」という人々の期待が混然一体となっているのを感じる。何だかすごいもの始まったなという感覚で何体ものガイコツがぶら下がる近所の家を横目に見ながら、私は娘と一緒にペーパークラフトのかぼちゃやコウモリ飾りを作り、気持ちばかりハロウィンモードへ移行した。

ハロウィン3週間前 コスチューム作り、お菓子準備
10月に入ると、子どもたちの間で「今年のハロウィンどうする?」という会話が交わされはじめた。娘に衣装の希望はあるかと聞くと「おばけらしいおばけになりたい。」というので、ターゲットという何でも揃うショッピングストアやネットショップで探すも気に入ったものが見つからない。これはもう自分で作ったほうが早いと思い、自宅にサイズが合わず余っているシーツがあったのでそれを娘に被せて動いてもらい、フードっぽい衣装を縫って間に合わせることにした。タイミング良く、近所の友人ケイティがミシンの使い方を教えてほしいというので、週末に彼女と一緒におにぎりを食べながら一気に仕上げた。これでコスチュームは揃ったので、あとは子供たちに配るためのお菓子があれば良い。何個用意すればいいかを別の友人に聞くと、昨年は200〜300個くらいだったかなとのこと。それを聞いて、えっそんなに?と思ったが、郷に入っては郷に従えで購入することにした。CVSでセールになっていた250個袋入りのキャンディーMIX($30)1袋、夫が自分ならこれが嬉しいとすすめた20個入りのチートス1箱($20)、加えて何となく我が家には日本のお菓子が期待されている気がしたので私の独断ででコアラのマーチ小袋入り30個($30)を中国系スーパーのAマートで購入した。私は今までの人生で、1万円を超える金額のお菓子を一度に購入したことなどなかった。正直かなり動揺したけれど、これで最低限の準備は整ったと思い、深く息をついた。

ハロウィン1週間前 かぼちゃのお化け「ジャック・オー・ランタン」作り
衣装とお菓子の準備を終えて安心していたら、オランダにいる友人家族からWhat’sAppにメッセージが入った。「今年は一緒にかぼちゃをデコレーションできなくてさみしいよ。」とのこと。メッセージと一緒に、かぼちゃをくり抜いて作るハロウィンの魔除け飾りジャック・オー・ランタンを持った娘の友人🌻の写真が添付されていた。それを見た工作好きの娘が私もこれ作りたいと言うので、これまたケイティに相談し、彼女の子供たちと我が家の庭でパンプキンカービング(かぼちゃのくり抜き)をすることになった。昨年は、くりぬいた後のかぼちゃが2〜3日で腐ってしまったことを思い出したので、私は娘がカービング作業を終えた後にかぼちゃの内側の水分とワタを取り除き、漂白剤を希釈したスプレーをかけて防腐コーティングをした。これで7日間もった。ジャックオーランタンを作る時は、1週間をきってから用意するのが吉と学んだ。

ハロウィン3日前 小学校のトランク・オア・トリート
ハロウィン本番の約1週間前にあたる10月25日には、娘が通っている小学校でPTA主催の「トランク・オア・トリート」が行われた。トランク・オア・トリートとは、全開にした車のトランクをブースに見立ててデコレーションし、子どもたちが車のトランクからトランクへ回りお菓子をもらうというものだ。車社会のアメリカでは定番のハロウィン前夜祭のようなイベントで、仮装するしないは個人の自由で参加する。当日行ってみるとDJがいて、マイケルジャクソンのスリラーやゴーストバスターズを流している。クラスマム(PTAのクラス取りまとめ役)からは、ホームルームティーチャー(クラス担任)の車が出ているから探してみてねとメールが来ていた。保護者は出展者(車)以外はほとんど仮装をしていなかったが、音楽に合わせて踊ったり子供たちに付き添ったりして慌ただしく動いている。ちなみにコスチュームで子供たちの話題を集めていたのは風船型着ぐるみタイプのもので、マインクラフトやロデオやスポンジボブのキャラクターなどに簡単に変身できるので最近人気なのだそうだ。

その夜、おとなしいけれど小さい頃からお祭り好きだった私の娘も、出来たばかりのおばけの衣装にいそいそと身を包み、黒のウィッチハットを被り、はじめて夜の学校を興奮しながら約2時間ノンストップで歩き回った。そして3日後に発熱した。
→後編へつづく
